パウルス・ポッテル(ポッター)≪若き雄牛≫

《若き雄牛》 1647 Oil on canvas, 2

一日また一日 日々 彼は学んでいた。だが忘れるべきではない 学び終わる前に終わりが来たのだということを。彼には師などなく また弟子もなかった。その生涯は 人に教えを施すにも短すぎたのだ。そもそも何を教えることができたというのか?デッサン法か?そんなものはおのずと身につく芸だし教えられるようなものではない。構図とか絵画的効果の技法か?晩年になっても彼はそういったことにほとんど気付くことはなかった。明暗法か?これなどもアムステルダムの工房中で 彼が実践するよりもずっとうまく伝えられていた。というのも明暗法は オランダの田園風景を通じて彼がやっとのことでしかもほんの少ししか思い至らないものだったのだから。(中略)熟練した実践についても 彼の作品がその証しとなるには適していないように 彼自身もそれを教授するには適していなかったのだ。

ウジェーヌ・フロマンタン『昔日の巨匠たち ベルギーとオランダの絵画』

フランス・ロマン主義時代後期の画家、評論家、小説家。現在では半自伝的小説『ドミニク』で名を残している。『昔日の巨匠たち』は1876年発表。

  • 翻訳

杉本秀太郎訳『昔の巨匠たち』白水社、1992年。
高橋裕子訳『オランダ・ベルギー絵画紀行 昔日の巨匠たち』(上・下)岩波文庫、1992年。
―鈴木祥史訳『昔日の巨匠たち ベルギーとオランダの絵画』法政大学出版局、1993年。など。

オランダの画家。動物画の第一人者。代表作 《若き雄牛》 1647, Oil on canvas, 236 x 339 cm, Mauritshuis, The Hague.