2004-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『英単語』その20

これまで幾つか抜粋した文学上の傑作のうち後半のものによって切り開かれ、固まってゆく国語の登場について、幾つかの説明が程なく上で述べた事実を後付してくれる。ウイクリフによる『聖書』翻訳や『農夫ピアス』といった二つの重要作品は、とりわけかつて…

『英単語』その19

書物だとか、中世の学者だとか以上に、授業は全くと言っていいほどひとつの言語で行うことができかねていたのだが、というのも依然、あまりに亡羊であまりに纏まりがないので書くための言語を固定できなかったのだ。教育から取引、社会的な人間関係に至るま…

『英単語』その18

権力、政治、狩猟に関係がある、つまり支配者層の生活にまつわる術語全ては、ノルマン語であり、例えば≪宮殿≫や≪城≫といった意味のpalace やcastleがそれである。アングロ=サクソン語は、高貴でない私的な残りの語、つまりhome とhearthといったものがあり…

『英単語』その17 ≪4 アングロ=サクソン語とオイル語の戦いそして英語への融合≫

4 アングロ=サクソン語とオイル語の戦いそして英語への融合 ノルマン人とアングロ=サクソン人と同じ戦場で戦うことになった二つの言語の要素とは斯様なものである。それからずっと後になって、城や町で融合することになったのだ。 まだまだ発展する力を持…

読み人知らず「クラリネットを壊しちゃった」

超逐語訳。 「ぼくのクラリネットのドが出ない」 ぼくのクラリネットのドが出ない ぼくのクラリネットのドが出ない ああ パパがこのこと知ったら どうしよう ああ パパがこのこと知ったら どうしよう おい お前!ってパパは言うだろう。 おい お前!ってパパ…

『英単語』その16 ≪3 オイル語≫

3 オイル語 一方、フランス語とは何だったのか、より正確に言えばオイル語(ウイをこのように言ったところから)と呼ばれていたものは? ギリシア語にかつてイオニア語、エオリア語、アッティカ語、ドーリア語があったように、四つの方言を数えた言語。≪フラン…

ステファヌ・マラルメ『音楽と文芸』より

お湯の沸騰する瞬間を 見るのが好きだ。 ただ単純に 現象としては 文明が自然の性質を用いているに過ぎないのだが 心象としてはそうではない。 蒸気機関を発明するほどの天才ではなくとも 何か心にざわめきを感じるのだ。 毎度毎度... だから毎度のように 鍋…

『英単語』その15

簡潔に、ここまでの話で、アングロ=サクソン語はどうなっているのか? 再び、主禱文の幾行かを引用するのがいいだろう。前回と同じ箇所であるのは、この言語の進化もしくは退化を判るようにするためである。 GEWEORTHE THIN WILLA ON EORTHAN, SWA-SWA ON H…

『英単語』その14

ブリテン島へ侵入する以前、デンマーク周辺のアングロ=サクソン語はスカンジナヴィア語の特徴を色濃く残しており、それはまったく失われなれず、それどころか非常に深く混ざり合っていたので、それが刷新されるのはデーン人の占領のときになってからなので…

ジュリア・クリステヴァ『詩的言語の革命』より

この間、世界を見た。 ポンピドゥーセンター一階の床一面に 世界地図が描かれていたのだ。 ちょいと悪戯心を起こしてみました的な 遊び心もたまには素敵なものですね的な アート感覚には ほどほどに ウンザリしているのだが 取り合えず 世界の真ん中に立って…

『英単語』その13

なんと惜しむべき不幸、これほどの草稿が失われてしまったとは。それは最後の侵略民であるデーン人が九世紀にこの地を荒らしてしまったからだ。全てが滅び、そうなるとアングロ族の栄光も陰り、いまやせいぜいウェセックス、エセックス、サセックス、ミドル…

『英単語』その12

八世紀の年代記作家ビーダによると現在の英国の北部及び東部がアングロ族の土地であり、南部並びに西部がサクソン族のものであった。ジュート族に関する記述は残っておらず、ただワイト島とケント州の一部に住んでいたということだけが分かっている。ケント…

『英単語』その11

低地ドイツ語族に関して、これだけに限って少し仔細に検討してみよう。過去に残された最も古い文学の痕跡は四世紀のものであり、ウルフィラスによる『福音書』のモゾ・ゴート語訳がそれであり、この言語はそれが話されたダキア*1の村民達によってこう呼ばれ…

『英単語』その10 ≪2 アングロ=サクソン語≫

2アングロ=サクソン語 ゴート語は二つに枝分かれしている。ひとつに高地ドイツ語、そしてひとつに低地ドイツ語。 前者をさらに分ければ、こういったものがあった。オトフリートとノトケルの『≪聖典≫注解』といった仕事に見られる古高ドイツ語、そして『ニ…

『英単語』その9

全く歴史的なこれらの頁はあちらでアングロ=サクソン語がこちらではオイル語が現れることになったものについて示すことにあり、ノルマン人が話していたのはこの二つの言語の方言であり、特殊なひとつの変異体でしかない。現在では英仏海峡と呼ばれている海…

『英単語』その8 「第二章 年代的記述」≪1 二つの要素≫

第二章 年代的記述 1 二つの要素 長い余談ではあるが、望むらくはこの章こそ大きな興味の的とならんことを。とは言え、後に説明されるものの何ものも、ここで語られることが役に立つことはないであろうが、また正確無比で本質的な事実として何ものも覆され…

『英単語』その7 ≪考察≫

考察 読者諸君、諸君らがここでご覧になっている一冊の著作の教えるものは筆記固有の特徴、つまり綴りと意味に限定されている。発音に関しては、二つに一つ、それを身に付けているか、先生にこれらの頁にある語彙のどれでも唱えて貰って、つまり補って貰って…

『英単語』その6

英語にはなくて他の言語に固有の特徴などひとつもない。従って英語の文献学は広い価値を齎してくれ、そしてその他に大いに探求する手間を省いてくれるのである。一見すると、ひとつの言語を充分に認識し、それをすっかり把握するには、存在する言語そして存…

ステファヌ・マラルメ『音楽と文芸』より

題名変えちった。 そんな気分だったから。 体中に写経して姿を消したい そ〜んな気分だから。 それと「愛の賛歌」で来るならまだしも 「様々なる意匠」で来る人にはちょっと申し訳なかったから。 今日は「英単語」ではなくて もそっと刺激的なマラルメの文章…

『英単語』その5

言語の始原に関する考察の中に迷うこともなく、「文献学」(つい最近の科学)はラテン語やギリシア語といった昔の死んだ言語や英語やフランス語といった近代の生きている言語の出現を検討することにより、言語が示す働きを正確に把握するのである。例えば、…

『英単語』その4

文献学は厳密に言えば偏に初期の段階で教わる英語(イタリア語でもスペイン語でもドイツ語でもよいが)を、まずは同じ成果に、次いで、全く別々の成果に至るように、補うことが目的であり、まさしく、それが明らかにすることが整理されれば、「言語の認識へ…