アンリ・ルニョー≪サロメ≫

サロメ

わが国の例年の展覧会に新しいものがあちこちに見受けられるのは稀だし 数年ばかりさかのぼってみても そんな豊作の年は更に稀なのだが 1860年ごろ 突然 長続きする一条の光が輝いたのは クールベがその作品を展示し始めたからであった。 (中略) つまり この運動は事物があるまま 見えるがままに生き生きと描写することによって心に印象付けることを目指し 断固 一切の余計な想像力を排除したのである。
 それは偉大な運動であり 当時まさしく 風景画家たちの手中で息絶えつつあったロマン派の運動や あるいはもう一つ後の アンリ・ルニョーの大胆な装飾の効果が由来するところとなった運動に 強烈さにおいて匹敵するものであった。

ステファヌ・マラルメ印象派の画家たちとエドゥアール・マネ」(1876年)より

  • フランスの詩人マラルメ[Stephane Mallarme, 1842-98]の印象派論。ただし初出は英語に翻訳された文章で原稿は残っていない。

引用箇所は印象派に至るまでの流れを マラルメにしては非常に簡潔にまとめているところ。

  • ギュスターヴ・クールベ[Gustave Courbet, 1819-77] レアリスムの祖。先日大阪でクールベ展があったようですが 現在(2004年11月現在)は八王子の村内美術館で行われている模様です。代表作はオルセー所蔵のものを三作挙げておきましょう。

<オルナンの埋葬>[1849-50] この作品は一つの事件として有名。埋葬という、テーマとしては英雄的なシーンを歴史画としてではなく 一般庶民の描写として示したこと しかも歴史画を描くようなサイズで行ったという点において19世紀の絵画で最も挑発的な作品の一つとなっている。
<画家のアトリエ>[1855] 画家自身曰く 写実主義としての「寓意画」。左半分は類型化された庶民の姿。右はクールベの支えとなってくれた人々の姿。社会主義理論を打ち立てたプルードンや詩人ボードレール(右端で読書している人物)が描かれている。
<世界の起源>[1866] 小品ではあるが 恐らく絵をあまり見ない人がオルセーに訪れたなら 最も印象に残る作品の一つに挙げると思う。実際 この作品は 「写実主義」の面目躍如たる作品とも言えるし 何にもまして 挑発的闘争的なクールベの人となりがにじみ出ているようで興味ふかい。

  • 風景画 フランスの <落穂拾い>で有名なミレー[Jean-Francois Millet, 1814-1875]、そしてコロー[Jean-Baptiste-Camille Corot, 1796-1875]及びイギリスのターナー[Joseph Mallord William Turner, 1775-1851]が代表的。

‐コローの代表作<真珠の女> モナリザと同じ姿勢。ルーブル所蔵。
ターナー<日の出>[c.1835-40]テイトギャラリーのターナーコレクション所蔵。

画像はMark Harden's Artchiveより拝借。