ヴェルレーヌ『艶なる宴』より「貝殻」


 二人愛し合った洞窟の
 象嵌のごとき貝殻に
 ひとつひとつの味わいが。


 ひとつは僕らの燃える赤
 心の血潮を密かにうつし
 僕は燃え立ち君は燃え盛る。


 別のはしどけなく青白い君を
 真似ているとからかう僕の目に、
 けだるげに、君はむくれてみせる。


 こっちは君の耳の
 気品にも似て、そしてあっちは
 短くぽってりした薔薇色のうなじ。


 でも、とりわけ、ひとつが僕を悩ませた!


 べたとも言えるエロティックポエム。
 さらに背景が洞窟だというところが淫靡さをいや増しに増す。
 ちなみに手元の堀口大學訳では 冒頭は

 


 ふたりがしっぽり濡れ合ったここな岩室


となっている。ムム、エロい。


堀口大學訳『ヴェルレーヌ詩集』新潮文庫
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