ジャン=イヴ・タディエ『二十世紀文学批評』より「ロラン・バルト」1

で、
最近いい本を見つけた。
Jean-Yves Tadié : La Critique littéraire au XXe siècle, Agora.
タディエの『二十世紀文学批評』でアゴラのポケット版だ。
二十世紀批評事典といってもよいだろう。
日本語に訳されているのだろうか?
訳されていないのなら是非どこか出してやってほしい。
これは便利だ。


タディエは以前ラジオに出ているのを聞いたけれど
東欧出身だけにひどいなまりを感じて
(クリステヴァのなまりはわからないらしいが)、
あぁやっぱり外国人だな、と。
それだけにあまりアクロバティックでない
堅実な文章が期待できるというものだろう
(クリステヴァのアクロバティックさには驚かされるが)。
では「ロラン・バルト(1918年−1980年)」の項を

Pendant vingt-cinq ans, cet écrivain brillant et insaisissable aura été, dans la pensée critique et linguistique française, de tout ce qui a semblé moderne : s’il n’a pas toujours arrivé le premier, c’est toujours lui, comme on l’a dit de Jean Cocteau, qui a planté le drapeau. Sa devise aurait pu être, jusqu’à sa Leçon inaugurale au Collège de France (1977), « Pas d’ennemis à gauche », une gauche littéraire, bien sûr. Il publie dans Les Communications, ses Éléments des sémiologies1 (rappelons que nous prenons le mot comme équivalant saussurien de « sémiotique »). Ils sont d’abord un classement clair de concepts que Barthes emprunte à Saussure, à Jakobson, à Hjelmslev surtout, à Martinet ; s’il ne les applique pas encore à la littérature, il le fera ensuite, notamment dans S/Z.

1 Repris dans Roland Barthes, L’Aventure sémiologique (Seuil 1985), ainsi que les principales analyses de récits rédigées par l’auteur.


二十五年の間、この輝かしくも捉えどころのない作家は、フランスの批評的言語学的思想に、現代的と思われたものすべてに属したと言えるだろう。いつも魁として現れたというわけではないが、ジャン・コクトーについて人が言ったように、旗を立てたのはいつも彼である。彼のスローガンは、コレージュ・ド・フランス開講講義『文学の記号学』(1977年)に至るまで、「左派の敵ではない」ということができるだろう、もちろん文学的な左派のことだが。1964年、コミュニカシオン誌に「記号学の諸要素」(1)を発表する(この語はソシュールの≪セミオティック≫(記号論)に同じであると付記しておく)。これはまずもってバルトがソシュールヤコブソン、とりわけイェルムスレウ、マルチネから援用した概念の明晰な分類である。依然これを文学に適用してはいないが、次から、とりわけ『S/Z』においてそれを行なうことになる。

(1)ロラン・バルト著、『記号学の冒険』、1985年に、著者が記した物語の主要な分析と並んで再録されている。

タディエ大先生の文章感想文。
フランス語を読んでいて
どうしても顔をしかめるのは
未来完了形だ。
これはこれから重点的に克服すべき弱点だと思っている。
もちろん文法書などで確認しているのだけれど
どうもすっと肌になじんでくれない。
タディエ先生も用いているが
未来完了形を特徴的に用いるのがデリダだ。
舌打ち舌打ちだ。ええかげん舌鼓を打ちたいのだが。
ところでイェルムスレウってHjemslev Hjelmslevの二つ表記があるんだが。
我がワードでは前者にスペルチェックが入るので後者が正しいのではと思うのだが、
タディエは前者で通しているし、グーグルでも検索にひっかかるからよくわからん。