アポリネール「マリジヴィル」

アポリネールを続けようという気は
なかったのだけれど、今日もアポリネール
というのもずっと探していた
イヴェット・ジローのポン・ミラボー(ミラボー橋、以下、ミラポンとする)が収められたレコード、
『愛について語りましょう』を見つけたからだ。
これがまた、
豪華な選曲で
「愛の賛歌」など愛にまつわる
どこかで聴いたことのある曲が目白押し、
元来、私はシャンソン聴きではないので
何かいいシャンソンをと問われたら
金子ゆかりか
越路吹雪の「愛の賛歌」か
三輪アキヒロの「よいとまけ」と即答する
シャンソン・ウヨなのだが
さすがにこのライン・ナップにはまいった。
そもそもミラポンはレオ・フェレが提供した曲で
彼自身もしばしば録音しているけれど、
実際のミラボー橋さながらに
くっだらねぇんすよ、フェレ・ヴァージョンは、私にとって。
レオ・フェレ自体、
一貫して有名詩人に曲を付けて歌うという姿勢は
そそられるものであるけれど、
フェレ、つまんねぇ〜、シャンソンってつまんねぇ〜って
悪い意味で唸らされてしまう。
でも、
そんなフェレにも、
ひとつだけ
志ん生の出囃子、一丁入りと
桂文楽の、野崎と
この一週間はミラポンと並んで
鼻歌オリコン、略してオレコンの上位を常に占めている曲がある。
それがアポリネールの「マリジヴィル」。
この詩自体の魅力がそもそも私にはわからないのだけれど、
マイナスとマイナスとが掛け合わさってプラスになっているのだ。
猫ふんじゃったを弾けない私でさえ、
これは弾けるんじゃないかと思ってしまう
フンガフンガという単純なメロディーと詩の場末感が
見事にマッチして、ドタマにこびりついて離れなくなのだ。
とはいえ、暗誦できるのは冒頭だけ、
ビートルズのイエスタデー状態なので、
日本語にしてもうちょっと長く暗記しておこうということで。



アポリネール「マリジヴィル」


ケルンのオート=リュを
彼女は毎夜行ったり来たり
しなをつくって身を任せ
歩きつかれて夜遅く
怪しい飲み屋で飲んでいた


彼女は文無し
赤毛で血色のいいひもがいて
この男はユダヤ人ニンニクの匂いを漂わせ
台湾出の彼女を
上海の淫売宿から連れてきた


いろんな輩がいるものだ
落ち葉さながら茫とした
運命に抗わず
目のともしびは消えきらず
心も扉さながら動いてる


Marizibille


Dans la Haute-Rue à Cologne
Elle allait et venait le soir
Offerte à tous en tout mignonne
Puis buvait lasse des trottoirs
Très tard dans les brasseries borgnes


Elle se mettait sur la paille
Pour un maquereau roux et rose
C’était un juif il sentait l’ail
Et l’avait venant de Formose
Tirée du bordel de Changaï


Je connais gens de toutes sortes
Ils n’égalent pas les destins
Indécis comme feuilles mortes
Leurs yeux sont des feux mal éteints
Leurs cœurs bougent comme leurs portes