第一章十四節−十七節



苦行と称していい気になって
十度読みというのを思い出したようにしている。
この半年は、主に聖書だ。
とちくるって、
全10巻の朗読CDを購入して、
その朗読に合わせ読んでいる。
こういう作業をしていると、
文章に相性があるということを感じる。
黙示録などは
福音記者ヨハネと同じヨハネなのかどうかという議論があるらしいけれど
100パーセント感覚的にではあるが、
逆さから読んだって
100パーセント同じヨハネだ。
つーかそうであって欲しい。
人に聞かれたら、
あ〜、あれ、一緒、一緒、一緒の人よ、と何食わぬ顔で言うだろう。
文章の、ここぞというときの、
しびれるほど引き締まった展開、
ときおり我慢できなくなったかのような自己主張、
(「わたくし、ジャンは」なんて言ったりする。)
やっぱり、これは同じ人だよなぁと思ってしまう。


この十度読み、
どんなくず本でもそれを終えた後は
否が応にも愛さずにはいられないので
お勧めではある。
暇人のなせる業ではあるが
愛しいものをはずれなしで増やす方法というのは
ありそうであんまりないことだと思うので、
あんまり人にいいたくないほどなのだ。


そんなわけで、
念願の声に出して十回読もう黙示録。


何ヶ月か前に
ロワール地方をうろちょろ、
アンジェという町に闖入したのです。
(関係ないが都市名の形容詞形にしばしば
きつねつままれたような想像だにしない変化を示すものがある。
ロワール地方の都市で言えば、
アンジェの形容詞形はアンジュヴァン、
さらにトゥールの形容詞形はトゥーランジョーとなる。
なんのジョーだんだ、と言いたくもなる。)
もとい。
アンジェの町自体はどうっちゅうことない。
どうっちゅうことない印象を与える町を
とりあえず、大宮とよんでいるのだが、
(大宮の人、ごめんなさい、とか言わねぇよ。)
アンジェはさしずめロワールの大宮でしょうか。
町そのものに感動したのはブロワというところですが
ブロワ城が大宮だったので
アンジェ城をブロワに移してくれればなぁなどと思った次第であります。
さて、
このアンジェ城、
捨てがたいのは、黙示録のタピスリーであります。
(町外れに現代版のタピスリーもあるが
これも見逃しがたいのであります。
アヌパマンケってやつであります。)
中世のものも現代のものも
もう、そりゃ、何も言葉が出ない。
口をあんぐり、あぁ。。声が漏れるだけ。
何か言うのももったいない、けがらわしい。
そんなタピスリーが地下ホールの壁一面にべっとり張り巡らされておるのです。
あぁ。。。と一巡りしてから、
暗くて画質は期待できないなと思いつつ
全部写真に撮ってやったので
それをこだしにしつつ。
(フランスでは基本的に常設作品はフラッシュ無しでとってもかまわないようです。
現代作品は比較的だめみたいですが。)


聖書の朗読を聴いていて、
ぎゃ〜と思ったこと。

このCD何人かで分担して読んでいるのだが、
人によって、イエス・キリストの発音が違うということ。
ジェジュ・クリかジェジュ・クリストか。
単なる好みかと思いきや、
前者がカトリックで後者がプロテスタント式発音らしい。
しらなんだ。


次にAmenの発音のこと。
語尾が-enの語は鼻母音じゃないのかぁコレクションにひとつ加わりました。
発音記号を遵守してカタカナ表記にすれば
アメーヌです。
これはフランス人に聞いたので間違いないと思われます。
黒檀、漆黒を意味するebèneと語尾が同じ発音と言ってましたので。
(事実、発音記号も同じ)
以前にもこの話どこかでしたけど、
他にhymen, Edenなんかがそうだ。

ベルクソーヌだそうだ。
けどやっぱり、
ebèneをエベーヌと表記することに違和感は覚えないけど
(むしろ、エベンという表記の方が変な感じはする。)
アメーヌとかエデーヌとかは、やっぱりちょっと抵抗あるよなぁ。
そういえば、ベルギー象徴派の詩人、ヴェラーレンも
ひどいときはヴェルハーレンなんて書かれていたりするけれど
方言だとかそんな理由でない限り、「ハ」なんて音は
ありえないので、この表記は問題外だが、
厳密に書くと、ヴェラーレーヌになるんじゃないだろうか。
今度ネイチヴに聞いてみるか。知らないか、こんな詩人のこと。
でも
とりあえず
聞いている限りではアメーヌには聞こえないけど。
ふつうにアメンにしか聞こえない。


ちなみにダヴィデの賛歌等の文章の締めくくりにしばしばみられる、
Ainsi soit-il, ainsi soit-il.
(かくあれぞかし、かくあれぞかし)は
Amenの訳だそうで、
しらなんだ、しらなんだ。



■第一章、十四―十七節。


十四
その頭、その髪は羊毛並に、
それから雲のように真っ白で、
その目は燃え盛る炎のようだった。
十五
その足は灼熱のかまどの中の
すばらしい青銅にも似て、
その声はさながら大水の
轟音であった。
十六
右手には七つの星があり、
その口からは諸刃の剣が出ており、
そのお顔は剛毅にも
太陽ほどに輝いていた。
十七
私はそれを見るや、
死んだもののように足元に倒れてしまったが、
私にその右手をそえ、こう言われた。
恐れるでない、私は始まりであり終わりである、と。


14.
Sa tête et ses cheveux étaient blancs
comme la laine blanche, et comme de la nuage;
et ses yeux paraissaient comme une flamme du feu.
15.
Ses pieds étaient semblables à l'airain fin
quand il est dans une fournaise ardente;
et sa voix égalait le bruit des grandes eaux.
16.
Il avait en sa main droite sept étoiles,
et de sa bouche sortait une épée à deux tranchants;
et son visage était aussi brillant que le soleil dans sa force.
17.
Au moment où je l'aperçus,
je tombai comme mort à ses pieds; mais
il mit sur moi sa main droite, et me dit;
Ne craignez point, je suis le premier et le dernier,


フランス語訳は、ド・サシによるもの。