Jean le bon



ジャン・ル・ボンという王様がフランスにいた。
正確にはジャン2世だが、
昔の王様にはそれぞれニックネームがつけられる風習があり、
一覧を眺めるだけでも面白い。
獅子王なぞは王者然として
かっこがいいが、
禿頭王、でぶっちょ王、土地なしのジャン、狂王などがいる。
それはともかく
ジャン善良王の横顔を描いた肖像画
ルーヴルの至宝のひとつだ。
横顔を描いた肖像画のうちヨーロッパ最古のものとされている作品だ。
この作品を眺めてみると、
ジャン善良王と呼ばれるだけあって
寛大そうなお顔をされている、
要するに画家が見事にその特徴を捕らえてるんだなぁ
などと感心してしまうのだ。
いや、
正確に言うと、そう感心して「いた」のだ。
しかし、
スタンダード仏和辞典によると
このジャン「善良」王というのは誤訳だという。
中世でボンと言えば、
それは「勇敢」という意味になるというのだ。
従って、ジャン勇敢王である。
それからというもの
この肖像画を見るたびに
確かに馬上から髪振り乱して
ばっさばっさと敵を切り倒していきそうな静かな迫力があるよなぁ、
本当に強いヤクザの親分みたいに。
遠近法も確立されていないのにうまいこと描くなぁと
そしらぬふりで感心している次第だ。