ボルドー焼



地方の焼き物の中では珍しく「精陶器」という表現が与えられる
ボルドー焼は
残念ながら十九世紀の後半にかけての七十年弱しか存在していない。
それだけに高値がついてやっかいであるし、
精陶器とは言え
やはり英国なんかで見られるボーンチャイナ
フランスのリモージュといった
マダームな雰囲気からかけ離れた
田舎臭い佇まいである。
そんな乗り気のなさで
ほとんど使命感と化した奇妙なコレクション癖から、
これまたマリコルヌのときと同じく
何かのついでに
これだけぼろいし蓋もなければさすがに安いし
とりあえずひとつと、
購入したおちゃっぱ入れだ。
城門の大きな刻印とともに、
ご多分に漏れず
ボルドー、ヴィエイヤール[ボルドー焼の作家Jules Vieillard]の文字が捺されている。
しかしである。
これこそが精陶器の魅力なのか
それともここのワインよろしく年季の味わいによるものか、
マリコルヌと違って
日に日にこいつがかわいくなってくる。
写真で見るよりも
ずっとつややかでありながら
マダームな雰囲気とかけ離れたぼてっとして素朴な雰囲気、
やっぱ外見より性格だよな、と声をかけたくなる奴なのだ。
こう気に入ってしまうと、
「テ」[お茶]と記された、
ジャンボ鶴田とかブローザー・ブロディーとかミルマスカラスとか
はたまた
無制限一本勝負
などといった昭和のプロレスの字体を髣髴とさせる
センスゼロの文字でさえ
なんだか様子がよろしくってよ
と思うようになってくる、
そんなボルドー焼のおちゃっぱ入れ。