マルセイユ焼



マルセイユ、ヴーヴ・ぺラン工場。
十八世紀の工場である。
マルセイユ焼を代表する工場である。
これと同じくまっきいろなお皿をしばしば見かける。
典型的な色使いなのだろう。
モチーフとしては
こういった大柄な花のほかに
おでこから、
というかおでこのみからちょろっと毛が生えている
中国奴の絵柄などを見かけるが、
一アジア人としては
へんてこシノワズリジャポニスムはほぼ無条件に、
生理的に却下なので
花柄をゲットした次第。


フレンチ田舎っぺ陶器だと
和物と違って、
十九世紀ならお値段的にアクセスしやすいが、
さすがに十八世紀の名器となると
そうはいかない。
だから、
あぁ、ばちあたる、ばちあたる、ばちあたる、と思いつつも
買ってしまったこのまっ黄色の皿は
直径二十センチにも満たない小さな図体の割りに値の張る一品である。
レプリカが存在するのかどうか知らないけれど
ヴーヴ・ペラン工場のものなのだ。
そりゃ、
ちゃんと働いて、ボーナスももらっている勤め人にすれば
この程度の小皿、
屁でもない値であることにかわりはないが、
あぁ、
おれもこれでマニア道に足を踏み入れてしまったと思わされた一品である。


だから、
人が来たときに、
大型のものは、きっとそこそこ値がはったんだろうと
気を使って丁寧に触れてくれると分かっているので
鋭い眼差しを向けることはないが、
ちょっとこの皿でチーズでも
陽気な気分で
くおうやないけ、ということになると
もう気が気でなくてチーズの味も忘れてしまうという一品である。


けれど、
こやつを眺めていると、
マルセイユは通過したことしかないけれど、
マルセイユに行った気にさせてくれるのだ。
黄色はマルセイユのためにある
マルセイユは黄色のためにある
そんな思いも抱かせる見事にザ・マルセイユな一品なのである。