第十二章第十三章―十六章



十三
ドラゴンは、こうして地に落とされると、
男児をこの世に産み落とした女を追い回し始めた。


13
Le dragon, se voyant donc précipité en terre,
commença de poursuivre la femme qui avait mis au monde l’enfant mâle.


十四
だが女は大鷲の両翼を与えられ、
砂漠の中その隠れ家のある所へ飛び立ち、
そこで一節、さらに幾節か、そしてまた半節と
その蛇のいないところで食べ物を与えられた。


14
Mais on donna à la femme deux ailes d’un grand aigle,
afin qu’elle s’envolât dans le désert au lieu de sa retraite,
où elle était nourrie un temps, des temps et la moitié d’un temps
hors de la présence du serpent.


十五
そうして蛇は女の後を追って川のようなものを
その頤から出し、
その流れに彼女を飲み込ませ沈めようとした。

15
Alors le serpent jeta de sa gueule après la femme comme un fleuve,
pour l’entraîner et la submerger dans ses eaux.


十六
だが大地は彼女を救ったのだ、
地割れを起こすと、
ドラゴンが頤から吐き出す川を飲み込んだのである。


16
Mais la terre la aida,
et s’étant entrouverte, elle engloutit le fleuve
que le dragon avait vomi de sa gueule.


[メモ]
天で負かされ地に落とされた
ドラゴン、ゲー言うてはるわ。とアンジェのお城で
ひとり笑みを浮かべながら眺めていたが、
原文には厄介なところがある。
ということでちょっとメモ。
・十四節[その隠れ家のある所へと]
原文は au lieu de .
で文法的には「〜の代わりに」が一般的だが、
前からの文脈という観点からすると、「〜のところに」と
字義通りに捉えたほうが
圧倒的に素直だと思われる。
そんなことより、
・同じく十四節「一節、さらに幾節、そしてそのまた半節と、」の箇所。
原文は、 un temps, des temps et la moitié d’un temps
冠詞が多様に、さらに半分という具体的な量を示す語が折り重なっている点からし
これはもう「しばらく」といった
ぼんやりとした時の概念ではないだろうということで
調べてみると
万聖「節」の、「節」という単位を「タン」と言うらしいので
うまく誤魔化すこともできず
ちょいと不自然だけれど
これだよなぁと推測した。