ロンウィ



この二、三年、フランスの焼き物を眺めてきて、
これであがりだとか
フランス陶器のキモとったとか
タマとったと思えるものが二つある。
二つだからタマだな、という話はさておき、
ひとつは
南仏のヴァロリスという町の陶器だ。
ここほどピンキリという言葉が当てはまる陶器のレパートリーを見せてくれるところはない。
無名諸氏によるいやげものから
ピカソといった大芸術家に至るまでの数多くの作家ものがあるのだ。
だからフランスといったカテゴリーではなく、
ひょっとすると
ヴァロリスのみのマニアになってしまうんじゃないかと
不安になる。
ここで作られた作家もののひとつに
タマのひとつがある。
ジャン・マレーの土鍋だ。
知る人ぞ知る俳優、そしてコクトーの愛人ジャン・マレーである。
個人的に言えば、
俳優としてのマレーはどうあがいても好きにはなれないが、
彼の作る陶器はどうしようもなくツボなのである。
黒やブロンズ色、そして肉厚、
そんな圧倒的な迫力は
どこか、
「おれはタチだ」と言わんばかりだ。
それほど豪快なのである。
ピカソを筆頭に
マレーよりもずっとひっくり返るほどの高値の作家の作品がここには数多いのだが
やっぱりマレーのものだ。
残念ながら
ものそものがなかなか出てこず未だに手に入れていないのだが。



ロンウィ[LONGWY]。
ロレーヌ地方の、1798年にできた窯である。
もうひとつのタマが
このロンウィの有線七宝でできたインク壺だ。
万年筆使いなのでインク壺を探していたのだけれど、
これが数はあれどなかなかいいものが見付からないのだ。
けれどもロンウィの一番小さなサイズの壺だけは別だ。
故事成句の意味ではなく見た目どおりの、青地に浮かぶ百花繚乱ぶり、
食器としては
毒を盛られたかのような華やぎで敬遠してしまうが
インク壺となれば話は別なのだ。
しかし、これも、やはりいまだ入手できていない。
この有線七宝よりかは劣るかもしれないが
ごく普通の陶器としてもロンウィは知られている。
そのうちのひとつが今日の写真の皿である。
これをひとめみて、
あ、マーボードーフ♪と思って購入してしまった。
私の知る中で最も抽象的でかっこよいと思っている
アンリ二世の紋章がモチーフである。
このアンリ二世の紋章をモチーフにしたものは
幾種類か目撃したが
スープ入れはかっちょいいですよ。
かなり、好き嫌いが分かれるだろうけれど、
ふたやなべのつまみが確か悪魔っぽい顔で、
そしてこの色、このモチーフなので、
ぐっと来る存在感をはなっとります。