フォンテーヌブロー焼



パリから遠方へ。
パリの南、電車で三十、四十分程の郊外、
フランソワ一世から代々続いたフォンテーヌブロー城で知られるこの町にも
どうやら窯があったようだ。
フォンテーヌブロー焼。
19世紀には
代表的な絵付師に装飾芸術家のJacob Petit[ルーブルにも二、三作品があるようだ]
という人がいるにはいるが
20世紀に既に消滅してしまっている、
あまり有名ではないこの焼き物は
ものそのものよりも
裏にある歴史が興味深い。
この地域の
ユダヤ人社会で発達したもののようで、
その歴史を辿ってみると
パリのマレ地区にこのフォンテーヌブロー焼きの店があったとか、
プルーストの祖父に当たる人が
この焼き物に深く関わっていたとか
それなりに
奥深い歴史がある。
とはいえ、
ほんとにパリ郊外の焼き物?といった風情の
庶民的といおうか
カントリーなとでも言おうか
そんなデザイン、
微妙だ、いまだもってこの兄弟(多分、兄と妹だ)は微妙だと思ってしまう。
それだけに彼らは私の視線を引き付ける。
あの子はかわいいんだろうか、かわいくないんだろうか、
と何度も眺めているうちに
いつのまにか気になって仕方がない存在になっているという
あれとよく似ている。
そんなお前たちを
帰国後は朝のポテトサラダの刑に処す。
その前に
輸送中に死刑に処されぬことを願ってやまない。