ヌヴェール焼



今日から南下して
ブルゴーニュ地方に入ります。
最も気になる焼き物のひとつ、
ヌヴェール焼き(Nevers)。
ここの歴史は古く、
1648年が始まりの年となっている。
歴史の古さによるものか、
その作風はルネッサンスの名残をとどめ、
ペルシャからも中国からも
その影響を吸収し、
いまだに名高い焼き物として知られている。
実際、貴族の館などに入って
当時の彼らが利用していた調度品などを見てみると
やはり、ヌヴェール焼きをしばしば見かけることができる。
個人的に特筆すべき特徴はというと
Assiette parlante
要するにしゃべる皿というシリーズがあり、
これが非常に興味深い。
愛国的なスローガン、
革命期には、その成就を呼びかける
血の滾るような言葉、
またときには
「動物が好きになればなるほど、人間が好きでなくなる」といった
ご飯を食べるための道具だとは到底思えないシニカルな言葉まで
書かれているのだ。
なかなかコレクション欲をそそるブツではあるし
実際、骨董的価値も高いものであるらしいが
持ったところで
どんな言い訳をしたって気持ちよく使えそうにないので
私は
こと物欲との折り合いという観点からは
知らん振りを決め込んでいる。
そこで
購入したのが
この壺。
お前ってほんとにバカだよな、
と最初からチュトワイエしてしまうような
オブジェに反応してしまう私としては
彼をほうっておくわけにはいかなかった。
ヌヴェール焼きは
基本的に
モンタニョン一族が
十九世紀末以来
その中心となっているようだが
これは二代目、1970年代末まで活躍した
ジャンさんによるものだと
サインからすると思われる。
デザインも典型的な
ブルーで施されたゆる〜い唐草文様だ
[と勝手に思っている]。
それはともかく
お前のような
でぶっちょは
砂糖だ!砂糖地獄の刑だ!ということで
わざわざ大き目の砂糖袋を買ってきて
砂糖漬けにしてやったのだが
いかんせん、
私自身、砂糖をあんまり消費しないので
一年以上もたつのに
一向に減らなくて困っている。
それとも、彼が食い意地を張って
おれに砂糖を使わせないようオーラを放っているのだろうか。
ちなみに
彼はでぶっちょ過ぎて
二本足で立てないらしく
三本、足が付いているのだ。
これもルネッサンス様式の名残と言えば名残だろう。
彼が、我が家で最も愛されている焼き物のひとつだ。
すさんだ気分のときにふっと彼が目に入ると
なんだかどうでもよくなって
笑みがこぼれそうになる。
こんなこと言ってる俺って
じじむさいような気もするけど。