カンペール焼



ブルターニュの焼き物として、
世界中で知られるカンペール
パリでも、ポンピドゥーセンター近くのサン・マルタン通りだっけかに
カンペールの店がある。
私自身、二、三度覗かせてもらったが、
日本人の観光客を見かけたこともあった。
大体はフランスのアンティーク食器として
セーヴルやリモージュを除いて
十把一絡げにされて日本では売られることが多いのだが、
ことカンペールに関しては、
しっかりと分類されてやり取りされている。


このカンペール
ブルトン人[ブルターニュ地方の人々]が伝統的な衣装を身に纏った姿などが
モチーフとなっており、
それがまた実に平和で朗らか、素朴で微笑ましいのだが、
一癖も二癖もあるということもまた否めない。
好き嫌いがはっきり分かれる焼き物なのである。
少なくとも、
この癖のおかげで
ひとつカンペールの皿を買えば、
ティーカップカンペール
ミルクポットもカンペールに、、、と何か呪われたように
揃えなければならなくなるであろう。
これがマニア道にはまらせるカンペールの魅力のひとつなのであろうが、
私はと言えば、
カンペールひとつだけに関わるつもりは毛頭ないために、
長い間、
コレクターとして、
さぁ、どうしよう。。。
どれが許せるだろう。。。と
逡巡させられた焼き物であった。
色々と古いものを探せば、
アール・デコ期のカンペールなど、
なかなか喉から手が出そうになるものも見かけるのだが、
マニア相場というものに邪魔されて、
入手できないままでいた。
けれども、
先日、
とうとう単独でイカカンペールに出会ったのだ。
それが上の写真。
灰皿か小物入れか知らないが、
カンペールとしては
かなりイレギュラーなデザインである。
実物は写真よりも圧倒的に素晴らしいものだ。
単純な黒ではなく、
メタリックなつやを放つ不思議な質感で、
裏にはHB Quimperのサインとともに
Bel Delcourtというサインも書き込まれている。
残念ながら、
作者なのかなんなのかリサーチできなかったが、
あまりのかっこよさに
ハンサム・デルクールと呼んでいる。
アール・デコ期に
いやげものから途轍もなく素晴らしいオブジェをこしらえた
Henri Delcourtという作家がデーヴル焼に存在するが、
何か関係があるのだろうか。
それはともかく、
フランスの陶器には
男故に、
どこかで自分自身に妥協を感じなくもない
おれの乙女心が反応するものはあっても、
をのこ心を十全に刺激するモノがなくて不満だったのだが、
意外にもカンペールからひとつ発見できたのである。