ポルニック焼



ブルターニュよりも僅かに内陸部にある
ポルニック[PORNIC]というところも
大西洋岸に近いだけに
ブルトン人ゆかりの町である。
ここの陶器も
カンペールほどではないが、
いい意味で商売っ気を感じさせるブルトン風の作品を数多く作っている。
上の写真はフランスの国鳥でもある雄鶏を描いたもので、
フランス全土で見られる最もポピュラーなものである。
こういった動物の絵付けはフランスの陶器では
雄鶏に限らず、
極めて多岐にわたり、
上のような箱ものであればまだしも
皿の真ん中にデカデカとできうる限りリアルに描きこもうとする態度に、
最初は
とまどった。
鳥や魚が描き込まれた皿に鳥や魚の料理を盛り付けて
セ・ボンだのデリシューだの
グルメぶって御託を並べているのだと思うと、
ほんま、こいつら、ワビサビさびしらずの野蛮人だと密かに失笑さえしていた。
しかし
長い間、繰り返し眺めていると、
ごくあたりまえのことに気付かされてくる。
要するに、こちらとしては
彼らの非ワビサビの美学の存在そのものに気付いていないということだ。
そこで、非ワビサビとは何か?と考えてみるに、
毎日、
こういったリアルな絵付けの食器で
とろりとしたソースなぞが和えてある食事をしていて、
ほぼ食べ終えようとする頃に、
リアルの絵付けが姿を現す、
そんなことにふと意識が向かったなら、
彼らは
ひょっとしたら食に対して
よりリアルな感謝の念を抱くのじゃないだろうか、
ということに思い至るのだ。
そんな印象を抱いて以来、
こういう具象そのまま抽象知らずの動物が描き込まれた食器を
敬意を込めて
メメントモリ」な食器と呼ぶようにしている。
ひょっとしたら、
皿にあるものを平らげて、
絵を見てワイン片手に
飽き足らず、
改めてあ〜腹減ったと思っているかもしれないが。
そう思いそうな人たちでもあるのだが。
きっとそうではあるまいと願いつつ。


われ今幸いに仏祖の加護と衆生の恩恵に依って、 この清き食を受く、謹んで食の来由を尋ねて味 の濃淡を問わず、その功徳を念じて品の多少を 選らばじ。
いただきます


われ今この清き食を終わりて心豊かに力、身に充 つ、願わくはこの心身を捧げて己が業(わざ)にいそし み、誓って四恩に報い奉らん。
ごちそうさま